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森田ゆり(エンパワメントセンター主宰)

子どもたちの強い生命力が明るく描かれていて、素晴らしい作品です。逆境をバネにして生きるタンポポのような子どもたち、その子たちを支えるまわりの大人たち。感動します。

<プロフィール>
早稲田大学卒業、Graduate Theological Union大学院卒業。1981年より、アメリカと日本で、子ども・女性への暴力防止専門職の養成に携わる。その後7年間、カリフォルニア大学主任研究員として、多様性、人種差別、性差別など人権問題の研修プログラムの開発と大学教職員への研修指導に当たる。日本にCAP(子どもへの暴力防止)プログラムを紹介。現在は、エンパワメント・センターを主宰し、行政、企業、民間の依頼で、多様性、人権問題、虐待防止などをテーマに日本全国で研修活動をする。「MY TREE ペアレンツ・プログラム」(虐待する親の回復支援)を開発し、実践者を養成している。著書『子どもと暴力』(岩波書店)ほか多数。1988年に朝日ジャーナル・ノンフィクション大賞を受賞。1998年に産経児童出版文化賞を受賞。2005年に第57回保健文化賞受賞。

http://www.geocities.jp/empowerment9center/

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佐藤忠男(映画評論家)

虐待を受けて保護されている子たちというと、心にトラウマを抱えていじけてしまっているのではないか、と思ってしまうのだが、この映画に見る子どもたちは、皆、普通の子どもたちである。むしろこの子たちは、よほど苦労を知り、大人びているとさえ思う。たとえばひとりの男の子はスケート部の練習にうち込む。なにか自分を鍛えるということに自覚的であるという様子がうかがえる。
彼は言う、「暴力の連鎖を自分の世代で止めて幸福な家庭を築きたい」と。学園の弁論大会がある。スピーチの原稿を書くのを指導員たちが懸命に指導する。
指導員たちはそこに何か本気な言葉が出てくるのを辛抱強く待っているようだ。
こうして書き上げたスピーチに感動している大人の顔も見える。それが一生懸命喋った本人に“晴れがましさ”として響いていってほしいと願う。いや、きっとそうなっていると思う。この子たちの健全な姿をきちんと見せてくれるのが、この映画の有難いところである。加害者である母親も登場する。このようなことが可能になったのは、母親もまた被害者なのだから、ただ責めるのでなく、和解への道を開くという話し合いも可能だとえられるようになったからだ。躾のつもりだった。しかしどうしてもそうしないではいられなかった。どうしてなんだろう、と自問自答が出来るようになることが、当事者たちにとって解決への第一歩なのである。

<プロフィール>
1930年新潟県生まれ。国鉄、電信電話公社勤務の傍ら、映画評論を書き始め、雑誌『映画評論』、『思想の科学』の編集長をへて、以後フリーで著作を続けている。その評論活動は映画から芸能、演劇、教育と幅広い分野にまたがり、海外で講演を行なうなど国際的評価も高い。特に中国映画を日本に紹介したことにより、中国では高い知名度を持つ。近年はアジア、アフリカ映画の日本への紹介に力を注いでいる。1996年から日本映画学校の校長を勤める。主な著作に『日本映画史 全4巻』、『世界映画史 上・下』、『いま学校が面白い』など。1996年、芸術選奨文部大臣賞ならびに紫綬褒章。

斎藤純(作家)

『葦牙』は難しいテーマに真っ正面から挑んだ問題作である。このようなドキュメンタリー映画を撮る必要のない社会が理想であることは改めて言うまでもない。逆説めくが、その理想に近づくために、勇気ある誰かが撮るべき映画でもあった。これは勇気ある映画作家らが、勇気ある協力者を得て出来た映画だ。
そして、この映画は児童虐待、育児放棄などの不幸なできごとによってもたらされたものではあるけれど見る人に勇気を与えてくれる。私は子どもたちの一挙手一投足から目を離すことができなかったし、子どもたちの言葉のひとつひとつに心を打たれた。これは我々おとなが、子どもたちから希望を教わる映画でもある。
私はもう一度人間を信じたくなった。

<プロフィール>
1957年、岩手県盛岡市出身。1994年、「ル・ジタン」第47回日本推理作家協会賞短編部門を授賞。2005年、戦前の自転車レースを舞台にした『銀輪の覇者』が「このミステリーがすごい」のベスト5に入る。岩手町立石神の丘美術館芸術監督、盛岡映画祭実行委員長、『街もりおか』編集長。

及川和男(作家)

子どもは、どんな逆境に置かれようが、必死になって生きようとする。それは未来可能性を一杯もった生きものとしての人間だからだ。その必死さ、ひたむきさが、実によく描かれていた。絶望と苦悩の末にやってきた施設で、寄り添い連帯する職員の力や、沢内、室根、高校教師の励ましのもとで、しっかり生きていこうとする子どもの姿は、まさに葦牙(あしかび)のごとく清冽で、われわれ大人も励ましてくれる。
親が変わっていくのも子どものおかげだ。
すごい映画が生まれたものだ。「命見つめ心起こし」という私の文学観に確信を深めることが出来た。

<プロフィール>
1933年東京生まれ。東京大空襲のあと疎開、岩手に住み着く。24年間の銀行員生活を経て作家活動に入り、小説・ノンフィクション・児童文学など50作ほどの著作がある。代表作のひとつ『鐘を鳴らして旅立て』(新潮社)は虚弱児療育施設時代のみちのくみどり学園のルポルタージュ。その他の代表作は、『村長ありき』(新潮社)『森は呼んでいる』『いのちは見えるよ』(岩崎書店)『米に生きた男』(筑波書房)など。農民文化賞・北の児童文学賞・多喜二百合子賞など受賞。日本文芸家協会・日本ペンクラブ・日本児童文学者協会会員。

『子どもにとって“親・家族”とは』 喜多明人(子どもの権利条約ネットワーク代表)

子どもにとって親、家族とはどんな存在なのか。この記録映画「葦牙―あしかび― こどもが拓く未来」では、虐待を受けるなどして親・家族から分離させられた児童養護施設の子どもたちの生き様がリアルに表現されている。観ている者に訴えてくるのは、子どもにとっての親の存在の大きさだ。そこにすべての人びとがこの映画を観て共感できるテーマがある。親から虐待され、見捨てられてきた子どもたち。「謝って欲しい」という気持ちと、でも「家族が大好き」という気持ちが交錯する。
子どもには愛される権利がある。親から愛されて育つ権利がある。子ども虐待や子捨てなどは、単に生命・生存の権利侵害であるだけでなく、児童期・成長期に欠くことのできない愛される権利の侵害である。愛されたことのない人は、人を愛することはできない。誰でも大切にされたことがなければ、相手を大切にはできないだろう。そのストレスが他者への暴力となって顕れる。
学園では、傷ついた子どもの心を癒すためにスタッフの努力が続けられている。あなたを大切にしているおとながこんなにいるんだよ、というメッセージを送られ続けることで、子どもたちに少しずつ笑顔がもどってくる。子どもたちが社会に出てもっとも大切なことは、どんなときも屈せずに、「けっこう私はやれる」と踏ん張れる自己肯定感。親から見離され、自分が生きていることに疑いを抱き、肯定できる自己を見出せない子どもたちにスタッフは問いかける。子どもが自己を肯定して生きていく道を探すため、サポートするスタッフの姿が美しい。

<プロフィール>
早稲田大学文学部教授。「子どもの権利条約」「子ども支援とまちづくり」に関する研究における第一人者として活躍中。日本子どもNPOセンター理事、チャイルドライン支援センター理事、川崎市子ども権利条例調査研究委員会座長、川崎市、目黒区などの多数の自治体の子ども条例づくりに関わる。『子どもとマスターする50の権利学習-イラスト版子どもの権利』(2006年・合同出版/共著)、『人権絵本』(ポプラ社)、『子どもにやさしいまちづくり』(日本評論社)他著。

「葦牙―あしかび-こどもが拓く未来」を観て 堂本暁子(前千葉県知事)

この映画を見ていると自分がみどり学園に身を置いているような気持ちになります。
それほど子どもたちが自然で、カメラを意識していません。だから、折々の子どもたちの表情から、そして一つ一つの動作から、親と話している電話の声まで、言葉にならない苦しさ、辛さが見る者に伝わり、迫ってきます。
時には、虐待を受けた子どもたちは、自分の感情を暴力で表現する以外に術をもたないのだろうか、と思うのですが、一方で、大人以上に悩み、自分自身と向き合いながら「自分が受けてきた暴力を、自分が親になるのであれば、息子や娘にはせず、ちゃんと育てて、(暴力を)なくしていくということが目標。(自分に)肉体的、精神的ダメージを負わせたことは、自分たちで止めて、その次の世代にはないようにしていかなければならない」、「僕が一番好きなのは絶対家族みんなです。それは絶対に嫌いにはなりません」と云うまでに自分の殻を破り、生きる力を内面から芽生えさせる。男の子も女の子も逞しく、雄々しいと云いたいまでの「葦牙(あしかび)」の姿に胸をなで下ろします。頭が下がるのは、ここまで5年、10年と子どもたちと生活を共にし、芽生えを支えている園長や指導員の努力です。人間同士としての触れ合いに心底感動し、こころ打たれました。
監督の製作意図は、親元を離れ、養護施設で、暮らす子どもたちのことを知る機会のない多くの日本人に、こうした子どもたちが急増している社会の歪みを直視するよう求めると同時に、18歳で卒園していく子どもたちを差別せず、暖かく受け入れる体制をつくるように願っているのかも知れませんが、この映画の最大の価値はドラマや第三者の評論と違って、当事者である子どもたちが堂々と登場し、訴えていることです。

<プロフィール>
1932年東京都出身。東京女子大学文学部卒業後、TBSに入社。記者・ディレクターとして、教育、福祉、ODA問題などを中心に取材。チベットのドキュメンタリーや北極取材、日本女性マナスル登山隊同行取材など、報道番組やニュース番組の制作に関わる。1980年、報道ドキュメンタリー「ベビーホテル・キャンペーン」で、日本新聞協会賞、文化基金賞、民間放送連盟賞などを受賞。1989年、参議院議員(比例区)に初当選。ODA、環境基本法などを審議。1990年、GLOBE(地球環境国際議員連盟)に参加。1993年、GLOBE日本総裁に就任。IUCN(世界自然保護連盟)の専任理事に就任。「国際人口・開発会議」に、日本政府の代表として参加。1995年7月、IUCNの北東アジア地域理事に就任。1997年、UNEP(国連環境計画)の「環境に貢献した25人の女性リーダー」に選ばれる。IUCN副会長に就任(~2000年)。2001年、千葉県知事に就任。参議院議員として、環境基本法、生物多様性条約、児童買春・ポルノ禁止法、特定非営利活動促進法(NPO法)、男女共同参画社会基本法、配偶者対する暴力禁止法(DV法)など、多くの審議、立法活動に関わってきた。

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